イベントが私たちに及ぼす三つの影響
初めて同人誌即売会(以下、「イベント」)というものに足を運んでから10年以上、定期的にサークル参加をするようになって5年以上経ちました。皺の足りない脳を絞りに絞って原稿を書いている間は「もう二度とイベントなんか参加しない」とさえ思うものですが、いざ新刊を発行しイベントが終わると「ああ、またイベントに参加したいな」と思ってしまいます。
なぜ「イベント」は同人者の心を惹きつけてやまないのでしょうか。
イベントが持つ「雰囲気」の力
イベント会場に流れる雰囲気には強い力があるように感じられます。
それは、あるいは「本を買いたい」「本を売りたい」という情熱です。好きなものを手元に集めたい、相手へ広めたいという欲望の熱量です。
それは、あるいは遠方から交通費と体力を費やしても訪れる参加者の活気です。せっかく都市部に出てきたのだから、せっかく顔を合わせたのだからイベントもその前後も余すことなく楽しもうという意欲の奔流です。
イベントが生み出す「交流」
イベントは「好き」という感情だけを軸に様々な人が集まるため、実に面白い交流を生み出します。
それは、あるいは「書き手」と「読み手」の交流です。個人サイトやPixivなどで一般人の創作物をWeb上で読むことができるようになって久しく、またWeb拍手やTwitterなどで読み手が書き手に意見を伝えられる環境も整ってきました。しかしWeb上の交流はあくまで文字での交流に留まってしまいます。「新刊ください」という笑顔、「前回のご本読みました」という肉声、「ありがとうございます」と本を手渡すときの体温は、書き手・読み手双方に「相手が存在している」という実感を与えます。
それは、あるいは「オンラインからオフラインへ」の関係性のシフトです。上で述べたとおり、Web上の交流は文字と絵での交流に留まってしまいますが、会場や打ち上げなどで実際に会話をすることで、友人同士や尊敬していた書き手との関係性がより濃いものになります。
イベントが与える「刺激」
イベントは得てして書き手に強いインスピレーションを与えます。
それを与えるのは、あるいは多くの創作物です。本のタイトル、装丁、表紙のデザイン、そして作品の内容。様々な創作物を目にすることによって、書き手は創作物それぞれに反映された多くの他人の個性の奔流に衝撃を受けるのです。
それを与えるのは、あるいはリアルでの対話です。イベント中の机と創作物を挟んでの対話や打ち上げでの語らいは書き手のイメージや解釈を掘り下げて明確化させます。
「イベント」が持つ力
ここまでで触れた「イベント」は同人誌即売会のことでした。しかし同様の「雰囲気」「交流」「刺激」は他の、会場を指定し、人間同士が集まり、言葉を交わす全ての「イベント」に当てはまることです。これらの三つの要素が自分に力を与えると意識してイベントに参加すれば、イベントの後の充実感もより増すのではないでしょうか。
さて、そろそろ次の新刊の原稿に取り掛かるとしましょう。
それでは、また。