続・すみっこの記

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【PSYCHO-PASS2、PSYCHO-PASS感想】劇場版PSYCO-PASS2 すばらしい新世界

劇場版PSYCO-PASS2 すばらしい新世界

SEAUnの民主化から2年。常守監視官を筆頭とした公安局1係はシプルス連合国の要請によってシプルス連合国公安部の支援に派遣されることとなった。

シプルス連合国は地中海上に浮かぶシプルス島とその周辺の小島からなる連合国である。2080年代まではイギリス・ギリシャ・トルコによる政治干渉によって国土が分割されていたが、イギリスからの領土返却――それはシプルスでの民族対立から逃れるための策であった――の後、徐々に民族間での対話が進められた。

2117年、シプルスは多民族で構成される連合国化を受け入れ、日本のシビュラシステムとドローンを輸入することで統治を図ろうとした。しかし、そこでは多くの問題が発生した。

1係の面々は多くの「免罪体質者」や「透明人間」に遭遇する。闇ルートで行われていた臓器移植とサイボーグ化が多くの「透明人間」を生み出したことは判明したものの、多すぎる「免罪体質者」には説明がつかない。

常守朱は改めてシビュラに問う、この国で何を行っているのか。シビュラの回答は次の通りであった。「幸福の最大化である」と。

その頃、霜月監視官は禾生局長の命令に従い免罪体質者の逮捕・収容を行っていたが、髪を隠さず行動していたことでイスラム系住人の怒りを買う。彼女に振りかかる暴力、しかしドミネーターが下した判定は「犯罪係数64、執行対象外です」。

すんでのところで六合塚執行官らに助けだされた霜月監視官のシビュラへの信頼は揺らぐ。「私は大丈夫、私はキレイ……」そうして彼女が見た自分の犯罪係数は限りなく100に迫っていた。

自問する常守。狡噛慎也、鹿矛囲桐斗、東金咲夜、雑賀譲二らの幻影。彼女はこの国でふたつのシビュラシステムが稼働していることを確信する。ひとつは日本のシビュラ、そしてもうひとつはシプルスで新たに作られつつある「シプルスの」シビュラであった。

「全く異なる文化、宗教観を持つ土壌で同じシステムが通用すると思う?」常守の問いに「日本の」シビュラは答えた。人間の根本的な部分はどこへ行こうとも変わらない、と……。

シプルスを離れ帰国する1係であったが、霜月の犯罪係数はなかなか下がらなかった。雑賀は言う。「昔はこういうのを、カルチャーショックって言って片付けたもんだ」

シビュラは文化的多様性を飲み込むことができるか?

上で述べた「劇場版PSYCHO-PASS2」の内容はただの私の妄想です。しかし「劇場版PSYCHO-PASS」においてシビュラシステムが文化的多様性というものに直面したのは事実でしょう。

SEAUnのモデルはおそらくタイだと思いますが、葬儀のシーンで描かれたとおり彼の地の宗教観は日本と全く異なっています。日本人のみの脳で構成されたシビュラシステムの裁きは、果たして本当に彼の地でも有用なのでしょうか?

そこで私が考えたのは、「この物語には続きがあるべきだ」ということです。シビュラシステムは技術的にはどこの国でも構築が可能です。しかし、多種多様な文化圏で作られたシビュラシステムの判定値は統一できるでしょうか?それを問う作品が必要なのではないか感じたのです。

神託による全体主義

上では「様々な文化圏に根ざしたシビュラシステムが必要である」と述べましたが、シビュラによる社会支配は裁きの神の神託による全体支配です。では裁きの神が複数存在する場合、その裁きは公正といえるでしょうか?

思うに、「PSYCHO-PASS2」で常守がシビュラに迫り、シビュラが受け入れた「集団としての犯罪係数計測」は複数のシビュラシステムが立ち上がった際の「公平化」につながるでしょう。

複数のシビュラシステムがクラウド化し地球全土を覆う世界、それこそがシビュラの目標であり、「シビュラシステムのプラットフォーム化」と呼べるものでしょう。

PSYCHO-PASS」のプラットフォーム化

鑑賞後、夫の感想で興味深かったのが「フジテレビはPSYCHO-PASSという作品をプラットフォーム化するつもりだろう、Fateシリーズのように」というものでした。

Fate/stay night」に端を発するFateシリーズは、その聖杯召喚システムのわかり易さから奈須きのこ本人だけでなく、虚淵玄成田良悟といった他の作家によっても作品が作られています。「Fate/Zero」のアニメ化や「Fate/strange fake」の電撃文庫からの出版は記憶に新しいところです。

誰にでもFateを書ける、ということは「聖杯召喚システムが完成しているから」に他なりません。そして「シビュラシステム」は前述の通り完成していない。シビュラシステムを概念として完成させ、「PSYCHO-PASS」という作品をプラットフォーム化するには虚淵玄でも、冲方丁でもない国際関係論・文化人類学に造詣の深いSF作家が「PSYCHO-PASS」本編を完成させるべきではないかと思いました。

「文明(シヴィライゼイション)とは消毒(ステリライゼイション)である」

引用元:『すばらしい新世界』のすばらしい名言・名場面 - 光文社古典新訳文庫

 

PROPLICA ドミネーター

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PSYCHO-PASS サイコパス (上) (角川文庫)
 
すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

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一九八四年 ハヤカワepi文庫

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