続・すみっこの記

富山生まれ下請けIT育ちのフリーライターが布団の中からお送りします

コンビニのない集落の女たち

私が高校まで住んでいたのは、コンビニすらない、茫漠と広がる田んぼの真ん中で木造住宅が肩を寄せ合っているような集落でした。

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大学に行かなかった青年たちの獅子舞

集落の家々はほとんどが農業を営んでいて、春と秋にはお祭りがありました。たまにはてブなんかでホッテントリ入りしている、獅子舞が家の中まで土足で上がりこみ、婿入りしたばかりの男性に日本酒を無理やりらっぱ飲みさせるような、ああいうお祭りです。
毎年やることとはいえ、伝統芸能ですから、練習があります。神社に併設された公民館で獅子舞の練習をする青年たちの中に、「勉強ばかりしている」と小学校の頃に嘲られていた秀才たちの姿はありませんでした。

輝いていた少女たちのあかつき

私は新居に引っ越すのが遅かったので、一度だけその獅子舞の準備の手伝いに行くことになりました。獅子舞の練習をしている広間の隣の座敷で、18歳以上の未婚の女たちが、法被やなんかを繕うのです。
そこに集っていた女たちを見て、私は怖くなりました。
女バレのエースだった娘は髪がパサパサになるまでブリーチをし、やたら濃い化粧をしていました。女バスのキャプテンだった娘に当時の健康的な輝きはなく、見た目だけ若い老女のようでした。
新体操で国体候補までいった娘は顎下に柔らかな肉を湛え、酒焼けした声で私に訊ねました。
「今、大学生?」
法被と針を手にしたまま頷いた私に彼女は興味を失ったように「そう」とそっぽを向きました。

車、バイト、オトコ

彼女たちはケラケラとすれた笑い混じりに車やバイト、オトコの話をし、時折メンソールのタバコを喫みました。免許を持っておらず、彼氏など出来たこともなかった私は彼女たちの話題に加わることが出来ませんでした。
ディズニーやサンリオのキャラクターのストラップがすずなりについた携帯電話が浜崎あゆみの着うたを流します。騒がしい携帯電話の向こう側と、中学の運動会の副団長が口汚く罵り合います。
彼女たちが、あんなにも輝いていたはずの彼女たちが、この田舎でゆっくりと老いに飲み込まれていく。イオンと、パチンコと、カラオケだけが娯楽のこの田舎で。その事実は私を打ちのめしました。

もう集落の娘には戻れない

県下一と言われる、県庁所在地にある進学校に進んだ時点で、私の道は集落の娘たちとは分かれてしまったのでしょう。できるだけ多くの生徒を東京や京都に送り出そうとする進学校と、農村で生きていくのに必要な知識をつけさせる学校とでは与えられる情報がまるで違った。
だから私は集落に帰ることができないのです。帰っても、そこで生きるすべを知らないがゆえに。

それでは、また。

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